タイプキャッシュおすすめ、2012年の厳選20フォントまとめ

海外の大手フォント販売サイトの一つである、MyFonts.comでは、2012年に3,451の新しいフォントがリリースされています (中でもウェブフォントでのリリースは、1,974件となっている)。Fonts.com, Linotype, FontShopなどのその他大手フォント販売サイトや、独立系タイプファンダリー、個人のタイプデザイナーを含めると、2012年に世界中で発売されたフォントは相当な数にのぼります。Typecache (タイプキャッシュ) では、その中で特におすすめのトップ20 + その他おすすめの39フォントをまとめてみました。

アルゼンチンのタイプ・ファンダリー、Huerta TipográficaのAlegreyaは、グーグルウェブフォントサービスでBasicバージョンが公開されていたセリフ書体で、2012年Proバージョンが発売された。カリグラフィーの影響を受けたかのような、文字の右上に比重があるデザインや、個性的なセリフの形状、効果的に使われているカーブが特徴的である。美しいイタリックはリズム感に富んでいる。この暖かみのあるセリフ書体は、長文に最適なバランスを持っている。Alegreyaは、Letter.2など数々の賞を受賞している。


Designer: Juan Pablo del Peral

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Fatypeは、KABK出身のAnton KoovitとYassin Baggar(Yassin Baggarさんは、日本で活躍しているタイプデザイナー、岡野邦彦さんのKABKでの同級生である)の若い二人によってつくられた新しいファンダリーである。Antonが今回手がけたセリフ書体であるAlekseiは、hやn、mなどのストロークの下辺が丸みを帯びていたり、とても大胆にデザインされている。例えば、ボールドバーションのイタリックなどの先が細くなっているセリフなど、ウエイトや、ストロークのバランスに気を払っていることが分かる。Alekseiは長文で組んだときも美しく、回転したようなインクドロップなど、細部の形は独特で、この書体をコンテンポラリーで面白いものにしている。


Designer: Anton Koovit

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Khajag ApelianによってデザインされたArekは、元々ラテン文字とアルメニア文字をサポートしたセリフ書体で、教科書のために作られた。アルメニア語で書かれた昔の写本を丹念に研究し、初めてアルメニア文字の筆記書体を完成させた。2012年、満を持してRosettaから発売されたこの書体は、ストロークを見れば、カリグラフィーの影響を強く受けていることが分かる。コントラストの少ないセリフで、傾きは強調されており、ところどころの細部で使われているカーブなど、この書体をユニークにする様々な仕掛けが施されている。GranshanやLetter.2を受賞している。


Designer: Khajag Apelian

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Commercial Typeがまた優れたグロテスク書体を世に出した。元々は、Munich Re Groupという保険会社のコーポレート書体であるUniversを刷新するためにデザインされた。この書体のデザインは、50年代にアムステルダムタイプファンダリーのために、 Dick DooijesとG. W. Ovinkがデザインしたサンセリフ書体、Mercatorが基になっている。Atlas Greteskは、Franklin GothicやTrade Gothicといった、アメリカンゴシックが持つコントラストがあるのが特徴でもある。小さいサイズで組まれたときも読みやすく、縦にも横にも、十分視覚的なゆとりを持っているため、本文用としても最適である。Kai Bernau、Susana Carvalho、Christian Schwartzによる素晴らしい作品である。なお、ファンダリーからはリリースされていないウェブフォントバージョンがタイプメディアのサイトでも使われている。


Designers: Kai Bernau, Susana Carvalho, and Christian Schwartz

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オールドスタイルセリフとモダンスラブセリフの双方に影響を受けた書体は、今までさほど数はなかったし、そのうえ、良いものとなるとあまりなかった。Dapiferは、その中でも特によく出来たユニークな書体である。オルタネート文字は、とりわけ興味深い。デフォルトの‘S’は、重心が低く設計されているが、オルタネートの‘S’はそれよりも高く平均的な位置になっている。イタリックはとても角度があり、オールドスタイルの要素をうまくアレンジした大胆なデザインをしていて、より一層この書体を興味深いものにしている。ステンシルバージョンも含めると、合計18スタイルが用意されていて、色々なシーンに使える。Darden Studioによる素晴らしい作品である。


Designer: Joshua Darden

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近年、幾何学的な書体が世に多く出ている。その中には、至って平凡で面白みのないデザインのものも少なくなかったが、Euclid BPは、そういったジャンルの中で頭一つ飛び出た書体と言える。幾何学的な形を用いながら今の時代に相応しくデザインするのは、至難の業である。このフォントは、ピクセル、セミピクセルといった異なった種類の形で作れられたものなど、500以上のオルタネート文字を用意したり、多くの合字も収録している。グラフィックデザイナーが好むであろう、実践でも幅広く使えるフォントである。


Designer: Emmanuel Rey

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Stéphane ElbazがGeneoをデザインし始めたのは、2008年のことである。Geneoは、過去のセリフ書体に似たクラシックな骨格を持っているが、セリフのデザインなどを見れば分かるように、それに現代的なアレンジが施され、ただクラシックなだけではないコンテンポラリーでユニークな書体となっている。Typofonderieにとって、Geneoは初めて外部のタイプデザイナーが手掛けたフォントとなったわけだが、それに相応しい素晴らしい仕上がりである。画線からセリフに繋がる部分が鋭角でなく、カーブしている(b、d、h、i、j、k、l、m、n、p、r、uを参照)。同時期にデザインされたGinkgoも似たような特徴があるが、その特徴をより押し進めた感じがある。セリフの形自体もカーブが多く、形も手書きのような抑揚があり独特である。また、dやp、異体字のaやgのカウンターは空いている。2009年のTDC2を受賞している。


Designer: Stéphane Elbaz

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2012年は「グロテスクの年」だったと言われることがある。Gira Sansは19世紀のサンサリフ書体に影響を受けている。実際一部の文字からその影響が強く読み取れるが、現代的な解釈を施され、今の時代に耐えうる新しい書体となっている。ともするとその時代の文字のなかには風変わりなものもあるが、Gira Sansはクリーンでよく作られた文字が並んでいる。イタリックは現代的で親しみやすい。それらを似ていると思う人もいるかもしれない。しかしながら、厳然とそれぞれの違いがあることも事実だ。今回のリストに挙がっているいくつかのグロテスクのうち、Gira Sansは中でも間違いなく素晴らしい出来であると言える。


Designer: Rui Abreu

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Greta Sansは、お馴染みのGretaのサンセリフバージョンである。Gretaは、本文用、ディスプレイ用、Grandeとそのイタリック体、さらにはそれぞれ幅の狭いNarrowバージョンが用意された巨大なファミリーだった。それと同様、Greta Sansも、4つの幅のバリーエションと多くのウェイト、そのイタリックが用意された、合計80フォントからなるスーパー・ファミリーである。


Designer: Peter Biľak with Nikola Djurek

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Okay TypeのHarrietは、特定の歴史的モデルがあるわけではないが、TransitionalとModern双方の影響を受けている。本文組に適したHarriet Textは、4つのウェイトとそのイタリックを持っている。Harriet Displayは、大きいサイズ向けで、ThinからBlackまで、6つのウェイトを持つ。使い勝手のいい書体である。特にDisplay Thinは極細で、細いヘアラインとセリフ、ボールターミナルは、この上なく魅力的だ。2012年のTDC2を受賞している。このフォントのために、特設サイトがHarrietのウェブフォントをふんだんに用いて作られている。ビジュアルとしても奇麗にまとまっているので要チェック。


Designer: Jackson Cavanaugh

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多くの人が美しいと感じるDidoneと、多くの人が一般的には醜いと感じる、通常とはコントラストが逆のItalianを、同じ骨格で、しかも、モノラインのスラブセリフも作るというコンセプトは非常に野心的だ。Didoneのペアとしてのサンセリフやスラブセリフは、今までないことはなかったがそれほど多くはなかった。ましてやItalianスタイルのバリエーションを作るというのは、稀な試みだ。ふつうは違和感を感じるItalianだが、ユニークであることは確かで、じっと見ていると何だかこれも美しく見えてくるのが不思議だ。


Conceived by Peter Biľak, designed by Pieter van Rosmalen, with assistance of Nikola Djurek.

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Krulは、Amsterdamのバーの窓やプレートを飾った「Amsterdamse Krulletter」(Amsterdam’s curly letter)をデジタル・フォントによみがえらせたものである。とはいえ、もちろん、オランダのletter painter、Jan Willem Joseph Visserの文字を単にデジタル化したのではなく、彼の文字やそのルーツを綿密に調査したうえで、再解釈を施している。アムステルダムの街を飾った、この美しい文字はそこにしかないもので、やがては消え行く運命だったかもしれない。Ramiro Espinozaはその文字たちを救い、時を超える存在にした。


Designer: Ramiro Espinoza

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Neil SummerourのLustは、Scotch ModernとDidoneの2つのバリエーションがあり(イタリックは共通)、Regularとさらに大きいサイズ用のDisplayが用意された書体である。ハイコントラストのLustは、大きなサイズで使われることを前提としている書体で、非常に大きなサイズでも見劣りがしないほどヘアラインは細く作られている。スワッシュ文字もふんだんに収録されているので、デザインの幅を広げるのに役立つだろう。


Designer: Neil Summerour

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歴史上有名なセリフ書体を各時代からピックアップし、モノラインの書体として生まれ変わらせたMarianは、音楽で言うところのカバーである。しかも、オリジナルに勝るとも劣らないカバー・ソングだ。GaramondやGranjon、KišやFournier、Baskerville、Bodoniなど、日本でも馴染みのある書体も採り上げられている。それらの骨格をもとに、慎重に選び取った線で作られたこの書体は、図らずももともとの書体の美しさを浮かび上がらせ、かつ、オリジナルにも負けないユニークさや美しさを存分に発揮している。9種類のバリエーションとそのイタリック、1種類のブラックレターがある。


Designer: Paul Barnes

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Estaはユニークなserif書体だった。a、c、f、r、s、yなどに見られるbrushyなターミナル、豊富な合字やスワッシュ文字、Dipslayにあるアップライト・イタリック風の文字……。New York Times magazineのために、このEstaを拡張させた書体がNyteである。Estaの良さは、オーソドックスな骨格をもちながらも、そこから軽やかに自由に羽ばたくような、先に述べたような特徴にあったが、Nyteはそれをさらに押し進め、かつ、ウェイトも現代的な極細のThinから太いBlackまでが用意されている。


Designer: Dino dos Santos

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Cyrus HighsmithのQuioscoは、Sports IllustratedやThe Hollywood Reporter、Wisconsin State Journalなど様々な媒体で使われてきた。そんなQuioscoが、ついに一般発売され、Font Bureauの、新聞での使用に最適化された書体のシリーズ、Readability Seriesの一つとなった。Prensaでも見られた、文字の外側と内側の形が違うというW.A. Dwigginsからの影響はここでも生かされ、コンパクトなスペースでも読みやすい書体となっている。


Designer: Cyrus Highsmith

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様々なロゴやカスタム書体でも知られるNick Cookeがまたやってのけた。OpenTypeフィーチャを使い、より手書きに見えるように作られた、彼のOlicanaは、瞬く間に人気の書体となっているが、Rollerscriptは、Olicanaよりカジュアルで、Olicanaと同じような長所を持っている。SmoothバージョンとRoughバージョンを持ち、それぞれ700以上のグリフが用意されている。OpenTypeフィーチャの機能で、前後の文字の並び方によって、デザインが切り替わったり、特別にデザインされた合字に切り替わったりするようになっている。それにより、より手書きに近い文字組を再現することができるのである。


Designer: Nick Cooke

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Themaは、Typonineの美しいstencil serif、Typonine Stencilの、stencilではないバージョンである。ローマ碑文の文字やオールドスタイル・ローマンの影響を受けていて、クラシックであり、かつ美しい。その一方、xハイトは高く、現代的にデザインされていて、非常にコンテンボラリーでもある。ディスプレー用にデザインされているのでハイ・コントラストで、ユニークなリガチャや異体字も収録されている。とても目を引く書体だ。


Designer: Nikola Djurek

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Knud V. Engelhardtの文字の影響を受け、斜め線で構成したというより、様々な文字の一部がトリミングされているTrim。その文字のトリミングはSkilt GothicOvinkよりも徹底され、完成度が高く、コンテンポラリーな書体として、同じジャンルの中で一つの到達点となっている。縦方向のスペースを考慮して作られた、Trim Posterのアクセント付き文字の処理も面白い。


Designers: Göran Söderström and Patch Hofweber (for Trim Poster)

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雪に囲まれた極北の国から生まれた、極限まで細いサンセリフ書体——Vinterはノルウェーの新しいファンダリー、Monokromの初めてリリースした書体の一つである。極細の書体はこれまでにも多々あったが、本当によくデザインされたものはそれほど多くはない。Vinterはその良い例外である。幾何学的でシンプルだが、めりはりのあるデザインを施された骨格は、微妙なコントラストを持つ極細のストロークによって、この書体に涼しげでエレガントな雰囲気を醸し出している。それはまるで凍てつく雪景色の中の煌めきのようだ。


Designer: Frode Helland

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その他の2012年おすすめフォント

上記20のフォント以外に、残念ながら一つ一つカバーしきれなかった、39のその他のおすすめフォントをまとめてみました。タイプキャッシュでは、facebookTwitter、サイトのニュースフィードでも日々のフォントリリース情報をアップデートしていますので、是非チェックしてみてください。

List by Akira1975 and Taro Yumiba / Text by James Chae and Taro Yumiba